「そもそも、合格するために2次試験対策をどのように進めていけばよいのか?」
2次試験は論述形式の試験で、与えられた情報を整理して、記述する力が試されます。
解答に使う知識を覚えて、それを記述する試験ではないことに注意してください。
なぜなら、合格者の再現答案では、与えられた情報で解答が記述されているからです。
与えられた情報を整理せずに、覚えていった一般論を解答に記述するだけでは評価されません。
そこで、与えられた情報を整理し、解答を記述するまでの手順「解答プロセス」が重要になります。
2次試験対策は、この「解答プロセス」を育てることです。
合格までの進め方にそって「解答プロセス」を見ていくと、以下のようになります。
まず、2次試験対策に取り組み始めたばかりでは、思うように解答が書けません。
そこで、解答を書くまでの手順「解答プロセス」が必要になります。
次に、「解答プロセス」や過去問に慣れた頃に、誰もが55点あたりで伸び悩みます。
この伸び悩みを突破することが2次試験対策の山場です。
伸び悩みを突破するには、過去問を解いて反省点を洗い出し、反省点の対策を「解答プロセス」にフィードバックすることが欠かせません。
試験本番では、これまでに育ててきた「解答プロセス」で淡々と問題に対応します。
上記のように「解答プロセス」を中心に、2次試験対策を進めることが重要です。
今回は、「解答プロセス」中心にした学習スケジュールと、おすすめテキストをご紹介します。
中小企業診断士2次試験の特徴
学習スケージュールの前に、2次試験の特徴を解説します。
2次試験の合格基準
2次試験の合格基準は上位20%に入ることで、実質的に相対評価です。
公式では平均60点以上で合格となっていますが、毎年の合格率は20%前後で推移しています。
試験後の実務補習の定員が1000名程度なので、この定員よる調整が原因だと考えられます。
2次試験の想定される採点方法
2次試験の採点基準は公表されていません。
しかし、再現答案などから「特定のキーワードが含まれているか」と「論理的に書かれているか」の2つが採点基準として想定されます。
なぜなら、合格者と不合格者の解答で使われているキーワードに違いがあるからです。
合格者と不合格者のキーワードの違いは、ふぞろいな合格答案で詳しく分析されているので、ぜひご覧ください。
また、キーワードが並んでいるだけでは採点のしようがないため「解答が論理的に書かれているか」は評価されると考えられます。
具体的な「論理的な文章の書き方」は、記事下の関連記事をご覧ください。
2次試験ではどんな問題が出題されるのか
2次試験は以下の4事例が出題され、各事例の試験時間は80分です。
- 事例1:組織や人事に関する問題
- 事例2:マーケティングや販売管理に関する問題
- 事例3:生産管理に関する問題
- 事例4:財務に関する問題
事例1から事例3の出題パターン
それぞれの事例で5から6問が出題され、1問あたり100字程度の論述形式です。
以下が典型的な出題パターンです。
- 問1と問2あたりで「環境分析」
- 問3と問4あたりで「課題の整理」
- 問5と問6あたりで「課題解決策の助言、提言」
事例4の出題パターン
事例4の財務では、主に計算問題が出題されます。
出題頻度が高いのは、「経営分析:決算書が読めるかどうか」と「管理会計:損益分岐点」の2分野です。
この2分野は、ほぼ毎年出題され、かつ、難易度が低いので重点的に抑えてください。
この2分野を取りこぼさなければ、後の問題は部分点だけで合格点に達します。
この2分野以外は時間をかけないことをオススメします。
なぜなら、出題頻度が低く難易度が高いからです。
会計士さんや税理士さんなどでなければ、ほぼ解けない難易度なので、時間コスパが悪すぎます。
「明確な答えのある事例4で稼ぎたい」という気持ちはわかりますが、実現可能性が低い(つまり、解けそうにない)と判断したら、作戦を変更する勇気も必要です。
2次試験の学習スケジュール
ここからは、習熟度を3段階に分けて、段階別に集中するポイントをご紹介します。
あなたの使える時間を考慮して、学習スケジュールを立ててください。
導入期 | 成長期 | 直前期 |
2次試験(過去問)に慣れる | 課題の洗い出しと克服 | 弱点補強 |
解答プロセスの整理 | 解答プロセスの見直し | タイムマネジメント |
必要知識の整理 | 不足知識の補充 | 必要知識の再整理 |
導入期
導入期とは、2次試験の勉強開始時期を想定しています。
導入期では「解答プロセス」を整理し、1〜3年分の過去問を解いて「解答プロセス」と「過去問」に慣れてください。
このステップで大切なのは、以下の3つです。
- 2次試験(過去問)に慣れる
- 解答プロセスの整理:一から構築するよりも、誰かのマネをしたほうが効率的
- 必要知識の整理:「知ってる」から「使える」に変換する
「必要知識の整理」は注意が必要です。
なぜなら、「必要知識が足りないから解答が書けない」と思い込み、使えそうなフレーズを過去問から補充しようと時間をかけてしまうからです。
「ふぞろい」の合格やA答案を見れば、解答は与件文の情報で構成されていることがわかります。
つまり、使えそうなフレーズ(一般知識)を集めることは時間の無駄です。
知識は、与件文の情報を整理するための切り口・論点整理に使います。
解答が書けないのは、必要知識が不足しているのではなく、情報整理の仕方が身についていないからです。
知識補充よりも、情報整理に集中してください。
「解答プロセス」や情報整理のやり方の詳細は、記事下の関連記事をご覧ください。
成長期
ここからが2次試験対策の本番です。
「解答プロセス」と過去問に慣れてきたら、「解答プロセス」を分解し、各ステップの精度を上げていきます。
多くの方がこの段階で伸び悩みますが、合格(上位20%)には、この伸び悩みを突破しなければなりません。
この伸び悩みを突破するために、このステップで大切なのは以下の3点です。
- 課題の洗い出しと克服:過去問を解いて反省点や課題を洗い出し、対策を考える
- 解答プロセスの見直し:課題の対策を具体的な手順に落とし込む
- 不足知識の補充:過去問を解いて、必要だと思う知識を補充
過去問は、H27年以降の5年分を繰り返してください。
なぜなら、H27年あたりから解答の文字数制限がタイトになったり、与件文が長くなったり図表が多用されるなど、出題傾向が変わっているからです。
「同じ事例を繰り返し解いたら、解答を覚えてしまう」とお思いかもしれませんが、解答を覚えてしまっても問題ありません。
なぜなら、解答に至るまでのプロセスの精度を上げることが目的だからです。
事例を解いた後に見直すのは、解答ではなく「解答プロセス」です。
また、同じ事例を繰り返し解いた方が、深く読めるので気づきが多くなります。
直前期
直前期では、試験時間内に解答を書きれるようにタイムマネジメントに注力します。
また、試験本番を想定して、解答の見直し方法も「解答プロセス」に組み込んでください。
なぜなら、緊張感の中での長丁場の試験なので、必ずミスは発生するからです。
ミスの見直しをせずに、本来取れる得点を落としていては苦戦します。
そこで、見直し方法も「解答プロセス」に組み込んで、ミスを減らす工夫をしてください。
このステップで大切なのは、以下の3点です。
- 各ステップの弱点補強:タイムマネジメントを意識し、各ステップの弱点を補強
- タイムマネジメント:試験時間内に解答を書きれるように、「解答プロセス」を修正
- 必要知識の再整理:整理した知識を「解答の切り口」としてすぐに引き出せる
学習時間の使い方(モデルケース)
平日 | 休日 |
個別課題の強化(1.5時間) | 個別課題の強化(1時間) |
過去問(2.5時間) | |
計算問題(0.5時間) | 計算問題(0.5時間) |
知識整理(0.5時間) | |
合計:2.5時間 | 合計:4時間 |
平日は個別課題の強化、休日は過去問を使った課題の洗い出しがおすすめです。
このペースで2カ月学習すると、合計で約180時間(2次試験合格の標準的な学習時間)に達します。
忙しい社会人のための時間の使い方のコツを紹介
まとまった時間がとりにくい社会人の方向けに、時間の使い方のポイントをまとめました。
- 朝時間の活用
- 個別課題の強化:30分で学習できるように課題を設定する
- 知識整理:移動時間などのスキマ時間を活用する
- 計算問題:仕事帰りに1テーマ(経営分析、管理会計など)に絞って学習する
- 毎日15分、何ができるようになったか振り返る
朝時間の活用
誰にも邪魔されなくて、頭がクリアな朝時間の活用がおすすめです。
早起きのコツは、早く寝ることです。
疲れたら寝てください。
スキマ時間の活用
2次試験の過去問を解いて振り返りをすれば2〜3時間かかります。
社会人の方は、このまとまった時間の確保が難しいと思います。
そこで、以下のようなスキマ時間の活用がオススメです。
- 知識整理
- 解いた問題の解答までのプロセスを頭の中で回す
- 計算問題
ぜひ、試してみてください。
「試験本番は、磨きをかけたプロセスで粛々と設問に対応するだけ」という状態を目指しましょう。
中小企業診断士2次試験の独学おすすめテキスト
ここからは、2次試験の勉強におすすめのテキストをご紹介します。
また、2次試験のテキストは1次試験終了時期(自己採点で合格を確信するあたり)にはAmazonから消えることが多いので、早めの確保をおすすめします。
解答手法の解説
「解答プロセス」を1から構築するのは非効率です。
以下のテキストで解説されている「解答プロセス」をマネして、そこからあなた用に修正してください。
中小企業診断士2次試験事例攻略のセオリー
論理的・戦略的な思考を中心に解答を組み立てる手順が解説されています。
また、試験対策のセオリーが多数紹介されています。
解説された手順をもとにした過去問解説が3年分ついています。
ただ、発行されたのがやや古いので付属している過去問も古めです。
まさに本質。
解答全体のストーリーを意識されているので、設問間の関連性や、設問の意図をつかむのに参考になるテキストです。
私が受験した際は、この本を中心に解答プロセスを構築しました。
30日でマスターできる中小企業診断士第2次試験解き方の黄金手順
解答手順がシンプルに整理されています。
シンプルながらも、重要なところは「箸の上げ下ろし」レベルまで解説されています。
特に、与件文の活用が詳しく解説されています。
解き方の手順がとても細かく解説されています。
与件文の扱い方に力が入っていて試験対策として、とても実践的です。
過去問
複数の過去問集を購入し、模範解答を見比べる使い方がおすすめです。
なぜなら、模範解答の共通部分は絶対に落とせないポイントになるからです。
また、独学ではどうしても視野が狭くなりがちです。
多くの視野を手に入れるためにも、複数の過去問集を見比べることをおすすめします。
ふぞろいな合格答案
多くの再現答案から、どんなキーワードが解答に盛り込まれていれば良いのかが分析されています。
実際の再現答案なので、ダメな解答が掲載されている点が他の過去問集と異なります。
ただ、解答の解説が物足らないです。
毎年6月頃に新しいのが発売されます。
合格からD判定の再現答案が掲載されているので、あなたの解答と見比べれば合格までのおおよその位置がわかります。独学では必須です。
同友館:中小企業診断士試験2次試験過去問集
各問題ごとに解答に至るまでの解説が詳しく掲載されています。
問題自体を詳しく分析している点が他と異なります。
事例別に構成されていることや、解説が問題のすぐ後ろにあるなど使い勝手がよいです。
5年分の解説が掲載されています。
事例別に構成されていることや、解説が問題のすぐ後ろにあるなど、非常に使いやすいです。
TAC:第2次試験過去問題集
問題本文の読み取りから解答作成までが丁寧に解説されています。
科目ごとの対応方法を分けて解説されている点が特徴です。
過去問が5年分掲載されています。
TACメソッドを知らなくても、過去問解説として使えます。
財務会計
計算問題で安定して得点を稼げると非常に楽になります。
ただ、応用問題を初見で解くのは至難の業です。
まずは、基本問題を確実にとれることを目指してください。
この試験は応用問題が解けなくても合格できます。
難易度が低い方から順番におすすめのテキストをご紹介します。
中小企業診断士 集中特訓 財務・会計 計算問題集
計算の基本問題を数こなすことに適した教材です。
基本問題を確実にとる、応用問題は基本問題の知識でわかるとこまで書いて部分点をとれればOKという方針であれば、財務はこれ1冊で十分です。
30日完成!事例IV合格点突破 計算問題集
頻出論点を中心に問題が厳選されています。
先ほど紹介した「集中特訓」に比べ、難易度はやや高いです。
ただ、設問文の記述があいまいな箇所がありモヤっとします。
問題が厳選されているので、短期間で仕上げたい方はぜひ
意思決定会計講義ノート
通称「イケカコ」
事例4の応用問題で出題頻度の高い論点が掲載されています。
ただ、難易度が高いため人を選びます。
正直、2次試験の範疇を超えています。
会計士さんなどで初見でも応用問題が取れそうなら、このテキストで高得点を目指してください。
その他
問題解決プロフェッショナル
2次試験の山場は、「55点の伸び悩みをどう突破するか」で、与件の情報整理が鍵になります。
与件整理にはMECE、ロジックツリーの考え方が必要です。
この本は、これらのロジカルシンキングがわかりやすく解説されています。
また、事例が豊富に掲載されているので、与件整理に応用しやすいのでオススメです。
1次試験後だと少し遅いので、時間のあるときに読みましょう。
まとめ
中小企業診断士2次試験の勉強は、解答に至るまでのプロセスを整理し、精度を上げていくこと。
- 合格基準は、おおむね上位20%で実質的に相対評価
- 想定される評価基準:「特定のキーワードが含まれているか」「論理的に書かれているか」
- 2次試験(過去問)に慣れる:この段階で点数や時間を気にしても無駄
- 解答プロセスの整理:一から構築するよりも、誰かのマネをしたほうが効率的
- 必要知識の整理:「知ってる」から「使える」に変換する
- 課題の洗い出しと克服:過去問を解いて反省点や課題を洗い出し、対策を考える
- 解答プロセスの見直し:課題の対策を具体的な手順に落とし込む
- 不足知識の補充:過去問を解いて、必要だと思う知識を補充
- 各ステップの弱点補強:タイムマネジメントを意識し、各ステップの弱点を補強
- タイムマネジメント:試験時間内に解答を書きれるように、「解答プロセス」を修正
- 必要知識の再整理:整理した知識を「解答の切り口」としてすぐに引き出せる
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