「そもそも、設問にどう応えればよいのか?」
設問に応えるためには「設問の意図」をとらえる必要があります。
「設問の意図」から外れると、論点やキーワードがもれて、評価が低くなるからです。

「設問の意図」とは、「何を答えさせようとしているか?」「なぜ、その質問をしているのか?」です。

「設問の意図」をとらえられるようにると、設問が解答を誘導していることに気づきます。
すると、解答の構造が見え、その構造にあてはめるキーワードも拾いやすくなり、的確に設問に応えられます。

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この記事では、設問の意図をとらえるための「設問解釈」を解説します。

設問解釈のやり方

設問解釈の説明に入る前に、解答手順(解答プロセス)における「設問解釈」の位置付けを確認しておきます。
2次試験の解答プロセスは、以下のようになります。

  1. 設問解釈
  2. 与件文からキーワードを拾う
  3. キーワードから解答文章を作成する

「設問解釈」は、設問文を読んで解答の方向性の仮説を立てるステップです。
具体的に「設問解釈」でやることは、以下の2つです。

1つ目は、設問文を読んで解答の制約条件を確認すること。
2つ目は、設問文を読んで与件から情報を拾う準備をすること。

では、順番に解説します。

解答の制約条件を確認する

制約条件とは、解答を制約する条件です。
この制約条件を忘れていると大外しのリスクが高まります
1つの設問でも大外しするとリカバリが困難になるため、最優先で確認してください。

制約条件のパターン
  • 数の制約:「〇〇を2つ述べよ」
  • 切り口の制約:「強みと弱みを述べよ」
  • 時間の制約:「〇〇以前の成長要因は?」
  • 観点の制約:「〇〇の観点で」「〇〇について」
  • 除外の制約:「〇〇以外で」

また、制約条件が解答の切り口のヒントになることもあります。
「除外の制約」では、「〇〇以外」という条件なら、〇〇と対(同じレベル感)になる切り口に注目してください。
たとえば、「利益率を上げる方法を、売上の拡大以外で述べよ」と問われた場合、切り口は「費用」です(実際には、材料費や人件費など細分化する)。

制約条件は解答の制約や切り口のヒントになるので、設問文を読んだ際に最優先で確認してください。

解答の切り口を作成する

「設問解釈」のアウトプットは「解答の切り口」です。
「解答の切り口」とは、与件文から拾ったキーワードを入れる枠のことを指します。

「解答の切り口」のイメージ

制約条件・切り口 行動     影響     結果    
論点1
論点2
論点3

この「解答の切り口」をテンプレートにして、設問文の注文や制約条件をメモします。

すべての設問に対して「解答の切り口」を作成したら、与件文を読み空欄のマスに与件文のキーワードを入れていきます。

以下のようなイメージです。

制約条件・切り口 行動 影響 結果(収益性UP)
Q 製品ニーズをもとに企画、製造 顧客ニーズに対応 高付加価値製品の販売
C 生産計画の頻度を増やす 需要予測精度を高める 原材料費の削減
D 設備の洗浄作業の標準化 生産リードタイムの短縮 人件費の削減

「解答の切り口」を使うと、キーワードの拾いモレが減るだけでなく、キーワードの整理が楽です

試験本番では、問題用紙の表紙(注意書きなどが書いてある)の裏が真っ白なので、問題用紙を束ねているホッチキスを外し、表紙の裏に「解答の切り口」を書けば、与件文を読みながら情報をメモできます。
また、すべての設問の「解答の切り口」を並べると設問間の一貫性が保ちやすくなります

ここからは、詳しく「解答の切り口」を見ていきましょう。

横軸:論理展開

「解答の切り口」の横方向は、論理展開の型を使います。
「論理展開の型」とは、2次試験で頻繁に登場する因果関係をパターン化したものです。

論理展開の型
  • パターンA:(切り口)は、〇〇、〇〇である。
  • パターンB:(根拠)のため、(結論)と考えられる。
  • パターンC:(行動)による(影響)により、(目的、結果)を図る

パターンAは、キーワードを列挙するときに使いやすい型で、情報整理系の設問に有効です。

パターンBは、「どのように考えられるか?」という設問に対して、「根拠」と「考え(結論)」を解答する際に使いやすい型です。

パターンCは、具体策の提案や効果、影響の分析に使いやすい型です。
最も汎用性の高い型で、「行動と影響」を「根拠」として捉えるとパターンBとしても使えます。
パターンBかパターンCかで迷ったら、とりあえずパターンCで「解答の切り口」を作っておけばOKです。

「論理展開の型」によって情報を整理しやすくなるだけでなく、論理展開のしっかりした解答文章を記述できます
詳細は、記事下部の関連記事の「解答文章の書き方」をご覧くささい。

縦軸:論点

「解答の切り口」の縦方向は、論点(切り口)を使います。
設問に誘導された切り口やフレームワークが入ります。

たとえば、「具体策を2つ述べよ」だったら2行になる感じです。

制約条件・切り口 行動     影響     結果    
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ここまで、設問文を読んで「解答の切り口」を作成する方法を解説してきましたが、
実際には設問文だけで「解答の切り口」が定まらないこともあります。
次から、この「解答の切り口」を修正するタイミングと修正方法を解説します。

解答の切り口を作成・修正するタイミングとコツ

解答の切り口を作成・修正するタイミング
  • 設問文を分解して、解答の切り口を仮決めする
  • 他の設問との関連から、解答の切り口を洗練する
  • 使っていないキーワードから、解答の切り口を修正する

試験での流れを追いながら、「解答の切り口」を修正するタイミングとコツをご紹介します。

設問文を分解して、解答の切り口を仮決めする

まず、設問文を読んで「解答の切り口」を仮決めします。
なぜ仮決めかというと、設問文だけでは解答の切り口が定まらないことがあり、
この段階で完璧を求めると時間が足らなくなるから
です。

以下は、設問文から解答の切り口を作成する際のポイントです。

設問文から解答の切り口を作成するコツ
  • 問われている論点を網羅する
  • 解答の対象を意識する
  • 時系列を意識する
  • 設問のレベル感を意識する

問われている論点を網羅する

設問文で挙げられている論点を網羅してください。
なぜなら、出題者が設問文で解答を誘導してくれているからです。

例えば、次のような設問文の場合

図1から図3を参考に、C社の課題を述べよ。

図1から図3の全てふれるように解答してください。

制約条件・切り口 行動     影響     結果    
図1
図2
図3

あと、よくあるのが

〇〇を踏まえて、理由を答えよ。

解答では〇〇に言及する必要があります。
言及する必要がなければわざわざ「〇〇を踏まえて」なんて書かないからです。

解答の対象を確認する

解答の対象が事例企業でないことがあるので注意してください。

たとえば、以下のようなパターンです。

  • (設問文)「A社のような中小企業にとって、」:一般論なので知識問題です
  • (設問文)「B社の提携先のメリットは何か」:提携先が主語です

時系列を意識する

設問文で問われていることを時系列(過去、現在、未来)の視点で捉えます。

  • 過去、現在:「どのように○○をしてきたか?」
  • 未来:「○○について助言せよ。」

過去と現在は、情報整理系の問題です。
素直に与件文にある情報を整理してください。

一方、提案など未来について問われている場合は、過去、現在の情報を「根拠」に、提言内容や期待される効果を「結論」として解答します。

設問のレベル感を意識する

設問で問われていることのレベル感(レイヤー)を意識してください。
経営の方向性を問われているのに、現場の改善レベルの解答をしても評価されないからです。

レベル感の目安として、以下の3レベルぐらいが使いやすいと思います。
①経営戦略レベル(ほぼドメインのこと)
②管理レベル(組織体制や生産管理)
③現場レベル

もう少し細かく分けたい方は、1次試験で学習した「戦略レイヤー」を参考にしてください。

各設問が①から③のどれかに綺麗に分類できるとは限らないので注意してください。
たとえば、「今後の経営の方向性と、具体策を助言せよ」は、
経営の方向性は「①経営戦略レベル」で対応して、
具体策は「②管理レベル」と「③現場レベル」で対応するイメージです。

他設問との関連から、解答の切り口を洗練する

ひととおり設問文から「解答の切り口」を仮決めしたら、次は設問間の関係から解答の切り口を修正します。
なぜなら、ひとつの設問だけでは「解答の切り口」が決まらないことがあるからです。

特に、SWOTなどの環境分析では、後ろの設問で環境分析の結果をどう使うのかがわからないと、「解答の切り口」が定まらないことがよく起こります。

他の設問をヒントにして「何のために問われているか」を意識すると、「解答の切り口」の精度が上がります

各設問が何のために問われているかは、以下の点を意識してください。

なぜ、この質問をしているのか

環境分析

  • 強み:戦略、課題解決策の材料
  • 弱み:個別課題の整理
  • 機会:ターゲット
  • 脅威:経営戦略転換の背景

課題:何を根拠にして問題を解決するのか

  • 課題の背景
  • 課題解決策
  • 課題の影響

すべての設問に対して「解答の切り口」が決まったら、与件文からキーワードを拾います。

使ってないキーワードから解答の切り口を修正する

「解答の切り口」が間違っていなければ、キーワードは余りません
キーワードが余った時は、余ったキーワードをヒントに「解答の切り口」を修正してください。

たとえば、以下の設問の場合

C 社の既存製品の販売数量は減少傾向にあり、さらに既存顧客から製品単価の引き下げ要求がある。それを克服して収益性を高めるには、あなたは中小企業診断士としてどのような方法を提案するか、Y 社との新規取引以外で、C 社にとって実現性の高い提案を 140 字以内で述べよ。

24 事例3 第4問

最初の解答の切り口はこんな感じです。

行動     影響     結果    
売上増
費用減

収益性向上策を問われているので、結果を「売上」と「費用」にしていました。

しかし、与件文からキーワードを拾っていくと、
「原材料費と人件費の割合が大きい」このキーワードが残りました。
これ絶対にこの設問で使うキーワードですよね。

そこで、「結果」の切り口をQCDに修正しました。

行動(提案) 影響 結果(QCD、収益性UP)
製品ニーズをもとに企画、製造 顧客ニーズに対応 Q:高付加価値製品の販売
生産計画の頻度を増やす 需要予測精度を高める C:原材料費の削減
設備の洗浄作業の標準化 生産リードタイムの短縮 D(C):人件費の削減

このようにキーワードが余った時は、余ったキーワードをヒントに「解答の切り口」を修正しましょう。
特に、事例1のように設問の意図がとらえずらい場合は威力を発揮します。

解答例
①製品ニーズをもとにした製品の企画、製造により、顧客ニーズに対応し、高付加価値製品の販売拡大を図る。②生産計画の策定頻度を増やし、需要予測精度を高め、原材料費の低減を図る。③設備の洗浄作業の標準化により、生産リードタイムを短縮し、人件費の低減を図る。

「解答の切り口」に論理展開の型を組み込んでおくと、機械的に文章を書けることがわかるかと思います。
この「論理展開の型」を使った解答文章の書き方は関連記事で紹介しているので、ぜひご覧ください。

設問解釈の効率化

「設問解釈」にある程度慣れてきた方向けに、効率化のヒントをご紹介します。

設問解釈の効率化
  • 完璧を求めない
  • 過剰なメモは不要
  • よく使う言葉は記号化する

完璧を求めない

設問の解釈は重要ですが、完璧を求めると時間が足らなくなります
与件を読むまでは、あくまで「解答の方向性の仮説」です。
この仮説に引っ張られすぎると、見落としが発生します。

与件を読んで理解が深まってから、修正する」ぐらいでちょうどいいと思います。

過剰なメモは不要

慣れるまでは、思考を見える化するためにメモを残すことは有効ですが、
慣れてくると効率化のためにメモは最小限にしてください。

例えば、解答の切り口に盛り込めない制約条件は、線を入れるか丸で囲むくらいで十分です。
なぜなら、試験中は設問文と与件文を行ったり来たりするので、目につくようにしておけば見落とすことはないからです。

よく使う言葉は記号化する

メモでよく使う言葉は、記号に置き換えて効率化しましょう。

たとえば、論理展開の「行動 → 影響 → 効果」パターンはよく使うので、解答の切り口をメモする場合は、「a →  i → c」と記号にすると時短になります。

あとは「課題」を「k」に記号化するなどのバリエーションがあります。

あなたがよく使う言葉をメモする際は、記号に置き換えると時短になります。

まとめ

制約条件のパターン
  • 数の制約:「〇〇を2つ述べよ」
  • 切り口の制約:「強みと弱みを述べよ」
  • 時間の制約:「〇〇以前の成長要因は?」
  • 観点の制約:「〇〇の観点で」「〇〇について」
  • 除外の制約:「〇〇以外で」
論理展開の型
  • パターンA:(切り口)は、〇〇、〇〇である。
  • パターンB:(根拠)のため、(結論)と考えられる。
  • パターンC:(行動)による(影響)により、(目的、結果)を図る
解答の切り口を作成・修正するタイミング
  • 設問文を分解して、解答の切り口を仮決めする
  • 他の設問との関連から、解答の切り口を洗練する
  • 使っていないキーワードから、解答の切り口を修正する
設問文から解答の切り口を作成するコツ
  • 問われている論点を網羅する
  • 解答の対象を意識する
  • 時系列を意識する
  • 設問のレベル感を意識する
なぜ、この質問をしているのか

環境分析

  • 強み:戦略、課題解決策の材料
  • 弱み:個別課題の整理
  • 機会:ターゲット
  • 脅威:経営戦略転換の背景

課題:何を根拠にして問題を解決するのか

  • 課題の背景
  • 課題解決策
  • 課題の影響
設問解釈の効率化
  • 完璧を求めない
  • 過剰なメモは不要
  • よく使う言葉は記号化する

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