「いつもキーワードを拾い損ねる。与件文を読むのに時間がかかる」
解答に必要な情報は与件にあります。
だから、与件から必要な情報を抜き出し、整理する必要があります。
また、与件整理は効率化が重要なステップです。
与件文は2000〜3000文字程度なので読むだけでも時間がかかりますし、
拾ってきたキーワードを整理しなくてはならないので、多くの時間が必要だからです。
この記事では、前半に解答に必要なキーワードを拾うコツ、与件から出題者の意図をくみ取る方法、与件文を効率的に読む方法を解説します。 後半に与件文から拾ったキーワードの整理方法を紹介します。
与件文から解答に必要なキーワードを拾う
解答に必要な情報は与件文にあります。
なぜなら、与件文に必要な情報がなければアイデア勝負になってしまい、客観的な評価が難しくなるからです。
ここでつまずく方が多いので厳しめに書かしていただくと、
出題者はあなたのアイデアや提言に興味はありません。
あなたの解答が中小企業診断士と名乗れる水準にあるかどうかが知りたいのです。
だから客観的な評価ができるように、必要な情報は与件文に書かかれています。
与件文からキーワードを拾うコツを2つ紹介します。
- 与件文から読み取る情報を想定してから読む
- わかりやすいキーワードから拾う、そして消す
順番に解説します。
与件文から読み取る情報を想定してから読む
どのような情報を拾うのかをはっきりさせてから読んだ方が、拾いたい情報を見つけやすくなります。
1時試験で学習した「カクテルパーティー効果」です。
設問文(もしくは設問解釈のメモ)を確認して、どんな情報を与件から拾うか意識してから与件を読んでください。
たとえば、「代替わりまでの成長要因は?」という設問であれば、
「代替わりまでにやったこと」を拾う。
「そのやったことで、どうなったか」を拾う。
設問と与件を行ったり来たりで非効率に思えるかもしれませんが、ぼんやりと与件を読む方が時間がかかりまし、キーワードの拾いモレがでてきます。
ぜひ、どんな情報を拾うか意識してから、与件を読んでください。
拾いやすいキーワードから拾う、そして消す
「どうすればキーワードの拾いモレをなくせるか?」
拾ったキーワードは線をいれて消していきましょう。
消していくことで、拾っていないキーワードが浮かび上がってきますし、消された箇所が多くなるほど読む箇所が少なくなるからです。
徐々に探索範囲を絞っていくイメージです。
拾いやすいところからキーワードを拾えば、拾っていない箇所を効率よく絞り込めるので拾いモレが減ります。
また、同じところを繰り返し読む必要がなくなり、与件文を読む時間が短くなります。
「拾ったキーワードは線をいれて消す」ぜひやってみてください。
与件文から出題者の意図をくみ取る
出題者の意図は設問文だけでなく、与件文からも読み取れます。
以下は、与件から出題者の意図をくみ取るポイントです。
- 与件文にわざわざ付け足したされた文章から出題者の意図をくみ取る
- 与件文から経営課題を読み取る
与件文からも出題者の意図をくみ取れようになると、設問文の解釈が難しい事例への対応力が上がります。
順番に見ていきましょう。
与件文にわざわざ付け足しされた文章から出題者の意図をくみ取る
わざわざ付け足したされた文章は、出題者の意図をくみ取るヒントです。
なぜなら、解答を誘導するために付け足されているからです。
「付け足された文章」とは、その文章がなくても全体の内容が変わらない文章です。
- 「〇〇していない」
- 「なお、〇〇」
- 「しかしながら、〇〇」
付け足された文章に注目して、出題者の意図をくみ取りましょう。
与件文から経営課題を読み取る
事例企業の全体像をつかむために「経営課題」を読み取ることが有効です。
経営課題をとらえれば事例企業の全体像が見えてくるからです。
私は与件文の経営課題が書かれている箇所に「☆」マークをつけていました。
ぜひやってみてください。
与件文を効率的に読む
与件整理は時間がかかるから、効率化が重要なステップです。
与件文のどこに何が書いてあるかをざっくりつかむ
まずは「どこに何が書いてあるか」を把握するために、斜め読みをオススメします。
与件文は2000〜3000文字程度あるため、細かい内容をいきなり捉えようとしても難しいからです。
設問文を読み終わった後に、5分くらいでざっと目を通して、後から読みやすくするためにマークを付けましょう。
- 経営課題に☆マーク
- 問題点に△マーク
- わざわざ付け足された文章に○マーク
- 設問と与件文のパラグラフの対応付け。与件文の左右の余白に、第2問なら「Q2」
設問と与件文のパラグラフの対応付けで、与件文前半など情報が多く応付けが難しい場合は、「環境」とメモしておけばOKです。
注意:与件文にマークするのは読むのを効率化するためなので、マーキングに時間をかけすぎるのは本末転倒です。
漠然と与件の重要そうなところにマークをつける方がいますが、与件の情報はすべて重要です。
マークだらけになって、マークが意味をなさなくなります。
最低限どの情報にマークすればがいいか、見直してください。
与件文を読むのは時間がかかるので、読みやすくする工夫をしてみてください。
与件文から拾ったキーワードの整理
「解答を見返すとキーワードのつながりがイマイチ。長い解答が苦手」
与件からキーワードを拾った後に、論点が整理できていないからです。
- 与件文から拾ったキーワードで論点(切り口)を整理する。
- 整理した論点にひも付けてキーワードを整理する。
論点を整理した後に、論点ごとにキーワードを整理します。
論点ごとにキーワードを整理した方が、キーワードのつながりがチェックしやすく、その結果、因果関係がクリアになるからです。
例えば
C 社の既存製品の販売数量は減少傾向にあり、さらに既存顧客から製品単価の引き下げ要求がある。それを克服して収益性を高めるには、あなたは中小企業診断士としてどのような方法を提案するか、Y 社との新規取引以外で、C 社にとって実現性の高い提案を 140 字以内で述べよ。
H24 事例3 第4問
①製品ニーズをもとにした製品の企画、製造により、顧客ニーズに対応し、高付加価値製品の販売拡大を図る。 ②生産計画の策定頻度を増やし、需要予測精度を高め、原材料費の低減を図る。 ③設備の洗浄作業の標準化により、生産リードタイムを短縮し、人件費の低減を図る。
各番号の論点は、①高付加価値製品の販売拡大、②原材料費の低減、③人件費の低減です。
各番号はひとつの論点に対応していて、関連するキーワードのつながりが入る構造になっています。
論点ごとにキーワードのつながりを見ていけば、因果関係を整理しやすいです。
また、論点を整理するクセをつけておけば、論点モレを減らすことができます。
もう少し例が欲しい方は「ふぞろい」の合格・A答案とB・C答案を見比べてみてください。
合格・A答案は論点がクリアで、解答が構造化されているのがわかります。
では、どのように論点やキーワードを整理するか見ていきましょう。
例題は引き続き「H24 事例3 第4問」を使います。
与件文から拾ったキーワードで論点を整理する
収益性向上策を問われているので、論点は「売上拡大」と「費用低減」になるかと思います。
この段階は「設問解釈(設問文からざっくり解答の切り口の仮説をたてる)」です。
この切り口で与件から情報を拾っていくと、以下のようになります。
論点(切り口) | 行動 | 影響 | 結果(収益性UP) |
売上拡大 | 製品ニーズをもとに企画、製造 | 顧客ニーズに対応 | 高付加価値製品の販売 |
費用低減 | 原材料費の削減 人件費の削減 |
「原材料費と人件費の割合が大きい」のキーワードから、論点を「QCD」に修正しました。
なぜなら「原材料費の削減」と「人件費の削減」に論点を分けた方が、それぞれの施策が整理しやすいからです。
D(納期)と「人件費の削減」のつながりの補足
収益性向上策を問われているので、ここでの「費用」は正確には「売上に対する費用(費用の割合)」です。
D(納期・生産リードタイム)が短縮されると、一定量の製品を製造するのにかかる労務費(人件費)が減るので、「売り上げに対する費用」が減るというロジックです。
論点(切り口) | 行動 | 影響 | 結果(収益性UP) |
Q | 製品ニーズをもとに企画、製造 | 顧客ニーズに対応 | 高付加価値製品の販売 |
C | 原材料費の削減 | ||
D(C) | 生産リードタイムの短縮 | 人件費の削減 |
整理した論点にひも付けてキーワードを整理する
論点が整理できたので、次は論点ごとにキーワードを整理します。
論点ごとにキーワードを整理するほうが、キーワードのつながり(因果関係)をチャックしやすくなるからです。
論点(切り口) | 行動 | 影響 | 結果(収益性UP) |
Q | 製品ニーズをもとに企画、製造 | 顧客ニーズに対応 | 高付加価値製品の販売 |
C | 生産計画の頻度を増やす | 需要予測精度を高める | 原材料費の削減 |
D(C) | 設備の洗浄作業の標準化 | 生産リードタイムの短縮 | 人件費の削減 |
Q:高付加価値製品の拡販
「強みを活かして個別ニーズに対応 → 高付加価値化 → 収益性向上」の鉄板パターンです。
「製品ニーズをもとに企画、製造」は第1問で整理したC社の強みです。
C:原材料費の削減
C社の課題のうち「原材料費の削減」につながりそうなのは、「生産計画の策定頻度を増やす」「ロットサイズの最適化」です。
このうち「生産計画の策定頻度を増やす」を消去法で採用しました。
なぜなら「ロットサイズの最適化 → 在庫量の最適化 → 原材料費の削減」だと、在庫で持っているうちは原材料費にカウントされないと考えたからです。
D:人件費の削減
「(施策) → 生産リードタイムの短縮 → 人件費の(売り上げに対する割合)削減」の展開です。
生産リードタイムの短縮につながるキーワードは「設備の洗浄作業の標準化」を使いました。
論点を整理した後に、論点ごとにキーワードを整理します。
論点ごとにキーワードを整理した方が、キーワードのつながりがチェックしやすく、その結果、因果関係がクリアになるからです。
時間がかかりそうだと懸念されるかもしれませんが、ここまでキーワードが整理できていれば解答の文章をノンストップで書くことができるので安心してください。
まとめ
- 与件文から読み取る情報を想定してから読む
- わかりやすいキーワードから拾う、そして消す
- 与件文にわざわざ付け足したされた文章から出題者の意図をくみ取る
- 与件文から経営課題を読み取る
- 「〇〇していない」
- 「なお、〇〇」
- 「しかしながら、〇〇」
- 経営課題に☆マーク
- 問題点に△マーク
- わざわざ付け足された文章に○マーク
- 設問と与件文のパラグラフの対応付け。与件文の左右の余白に、第2問なら「Q2」
- 与件文から拾ったキーワードで論点を整理する
- 整理した論点にひも付けてキーワードを整理する
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