「文章を書くのが遅い」
初学者の頃、私は解答文章を書くのにすごく時間がかかっていました。
しかし、「文章の型」を利用すると機械的に解答を書けるようになりました。
必然的に書く時間が短縮され、1事例の600字にかかる時間は20分程度でした。
今回は、「文章の型」を使った解答文章の書き方とトレーニング方法を解説します。
2次試験に必要な文章の型
2次試験に必要な文章力
「文章の型」の解説の前に、2次試験で求められる文章力を整理させてください。
2次試験に求められる文章力は以下の3つです。
- 冗長な表現をなくし、キーワードをできる限り盛り込む
- 論理的な文章で採点者に解答の意図を伝える
- 試験時間内に記述する
これらの文章力を身につけるのに「文章の型」が有効です。
なぜなら、「文章の型」を身につけていたら論理的な文章を機械的に書けるからです。
2次試験に必要な文章の型
2次試験に必要な「文章の型」は、因果関係を意識した型です。
- パターンA:(切り口)は、〇〇、〇〇である。
- パターンB:(根拠)のため、(結論)と考えられる。
- パターンC:(行動)による(影響)により、(目的、結果)を図る。
これらの3つの型とその組み合わせで、たいていの設問に対応できます。
それでは、一つひとつ見ていきましょう。
パターンA:(切り口)は、〇〇、〇〇である。
キーワードを列挙するときに使いやすい型です。
情報整理系の設問に有効です。
必要な対応は、①国産牛の個体管理の実施、②全店で必要とする主力メニューの盛り付け前までの事前加工体制の構築、③前日発注、翌日全店配送が可能な体制の構築である。
必要な情報は、①取り扱う国産牛の個体管理情報、②主力メニューごとの味付けや盛り付けなどの加工情報、③Y社の店舗ごとの発注状況や配送先住所、配送時間である。
活用すべき競争優位性は、①新製品開発力・提案力、②製品の標準化や据付施工面での保安対策技術などの製品・施工品質である。
伝統製法を活かし市場に合った焼酎を提供した。具体的には、①全国向けに芋の香りを抑えた焼酎、②県内向けにロック飲用に合った焼酎、③市内向けに甘みのある味わいの焼酎を提供した。
パターンB:(根拠)のため、(結論)と考えられる。
「どのように考えられるか?」という設問に対して、「根拠」と「考え(結論)」を解答する際に使いやすい型です。
事例4は文字数制限がきついので、この型を使ってコンパクトにまとめる必要があります。
NPVがプラスであり、CVP比率が低下するため、A案を採用すべきである。
B社の販売実績は前年比で41.8%増であるのに対し、競合Z社は0.9%増、PBでは11.8%増であり、B社が一番伸びているため、イベントやPOPはB社の販売実績に好影響を与えたと評価できる。
かまぼこ全体の売り上げが20,000円増加し、水産練物全体では35,000円増加しているため、かまぼこだけでなく、かまぼこ以外の水産練物にも好影響を与えたと評価できる。
パターンC:(行動)による(影響)により、(目的、結果)を図る
具体策の提案や効果、影響の分析に使いやすい型です。
最も汎用性の高い型で、「行動と影響」を「根拠」として捉えるとパターンBとしても使えます。
①製品ニーズをもとにした製品の企画、製造により、顧客ニーズに対応し、高付加価値製品の販売拡大を図る。②生産計画の策定頻度を増やし、需要予測精度を高め、原材料費の低減を図る。③設備の洗浄作業の標準化により、生産リードタイムを短縮し、人件費の低減を図る。
首都圏市場に参入するために、①汎用加工機を設置し、汎用品や補助部材を生産可能にして、物流コスト低減を図る、②関東にも物流センターを設置し、首都圏市場への即納体制をとり、物流コスト低減、短納期化を図る。
B社の寄付等がX市内の消費者に評価され、地域住民との関係強化や顧客ロイヤリティーの向上により、売上拡大に結びついた。
ここで紹介した3つの型で2次試験は対応できると思います。
次は、実際の試験の流れで解答文章を書く手順を解説します。
2次試験の解答文章の書き方 3ステップ
ここからは、解答の文章の書き方の手順を解説します。
以下が具体的な手順です。
- ステップ1:設問文から文章の型を決める
- ステップ2:文字数から具体性を決める
- ステップ3:文章の型にあてはめて文章を作成する
ステップ1:設問文から文章の型を決める
まず、設問文で問われている内容から「文章の型」を決めます。
例えば、
X 社から加工部門を分離して創業した C 社の成長要因は何か、100 字以内で述べよ。
H24 事例3
「文章の型」として、以下の2つが考えられます。
- 成長要因は、○○である。:パターンA「(切り口)は〇〇である。」
- 〇〇により、成長した。:パターンC「行動、影響、結果」
ステップ2:文字数から具体性を決める
次に、解答の文字数制限からキーワードの具体性を決めます。
文字数制限が厳しい場合は、キーワードを要約して書く必要があるからです。
例として、先ほどの設問に対して次のようにキーワードを拾ってきたとします。
行動 | 影響 | 結果 |
加工工程の見直し、加工技術の向上 少品種多量生産体制による生産性向上 顧客のニーズを把握した製品企画 |
x社以外の食品スーパーとの取引拡大 外食チェーンからの受注 |
成長 |
各キーワードを15文字として5つのキーワードなので合計75文字、キーワードは要約しなくても100文字におさまりそうです。
もし、文字制限内におさまらない場合はキーワードを要約します。
例えば、「加工工程の見直し、加工技術の向上」→「加工工程・技術の改善」のようにします。
ただ、要約すると与件文のキーワードとズレていくので、できる限り要約せずに与件文のキーワードを使ったほうがいいです。
1キーワードの文字数の目安から切り口の数にあたりをつける
過去問を分析すると、1キーワードの文字数の目安は15文字がちょうどいいです。
この1キーワード15文字から逆算すると、解答に使う切り口(論点)の数がわかります。
例えば、100文字制限の設問では次のようになります。
「〇〇の要因は何か」:○○が「結果」になるので、解答には「行動」と「影響」を記述します。
ひとつの切り口は「行動」と「影響」それぞれが15文字で合計30文字。
そこから「切り口の数は3つになりそう」とあたりがつきます。
「具体策は何か」:「行動」「影響」「結果(効果)」で合計45文字。
ここから、切り口は2つとあたりがつきます。
このように、1キーワードの文字数の目安を持っておくと、切り口の数にアタリがつけやすく、
また、文字数調整がしやすくなります。
ステップ3:文章の型にあてはめて文章を作成する
キーワードを「文章の型」にあてはめて、解答文章を作成します。
例では、「行動→影響→結果」の型を使います。
解答文章を書くまでの流れはイメージできたでしょうか?
各ステップのより詳細な解説は記事下「関連記事」をご覧ください。
次は、解答文章をより洗練するためのコツを紹介します。
2次試験の解答文章を書く4つのコツ
以下は、解答文章を書く4つのコツです。
- くどい表現を削る
- 文末表現の引き出しを増やす
- 論理展開を確認する
- 解答文章作成にかかる時間を把握しておく
くどい表現を削る
出題者との共通認識である与件文のキーワードを変える(要約する)のはリスクがあるので、キーワードより先に「くどい表現」を削りましょう。
- 「ということ、ていく」外注ということを考えていく → 外注を考える
- 「すること」 宣伝することによって、集客する → 宣伝によって、集客する
- 「するようにします」 共有するようにします → 共有します
- 「においては」 飲食業界においては → 飲食業界では
- 「ことで」精度を上げることで → 精度を上げ
- 「を行って」標準化を行って → 標準化し
- 「〇〇化を図り」〇〇の短縮化を図り → 〇〇を短縮し
- 「関する」製品に関するデータ → 製品データ
- 精度の高い生産計画が策定できていないこと → 生産計画の精度が低いこと
普段から意識することが大切です。
文末表現の引き出しを増やす
「私は語彙力がなくて、、、」と悩まれている受験生の方、安心してください。
2次試験では与件文のキーワードを書くだけなので語彙力はあまり必要ありません。
ただし、文末の表現は与件文にないことがあるので、文末表現だけは引き出しを持っておいた方がいいです。
- 列挙:体言止め、こと、点
- 理由:から、ため
- 効果:図る、高める、抑える、解消する、低減する
- 効果(行動より):構築する、対応する、促進する、実現する、訴求する、見直す
このようなメモを作っておき、文末表現に迷った時にメモから取り出して使うと定着が早くなります。
論理展開を確認する
「ふぞろい」に掲載されている合格答案はキーワードが「原因」と「結果」でキレイにつながっていて無駄がありません。
「特定のキーワードを拾えているか」に注目がいきがちですが、解答文章の論理展開にも注意してください。
解答の論理展開をチェックする際は、以下の点に注意してください。
- 単なる言い換えになっていないか
- 「原因」と「結果」の間にワンクッション挟む必要がないか
- そもそも因果関係があるのか
文字数制限にひっかかる解答は、「単なる言い換え」になっていることが多いです。
解答文章作成にかかる時間を把握しておく
「試験の残り時間が気になり、余裕がなくなって」
普段から、文章作成にかかる時間を把握しておきましょう。
100文字あたり何分かかるかを把握しておけば、対象の事例で文章作成にどれくらい時間がかかるかを見積もれます。
「20分あれば書けるから、〇〇分までは与件文に時間が使える」
この安心感が余裕をうみます。
2次試験の解答文章の書き方 トレーニング方法
ここからは、「文章の型」を習得するトレーニング方法を紹介します。
以下が具体的な手順です。
- マスターしたい「文章の型」にあった設問を選ぶ
- 選んだ設問の模範解答をキーワードレベルに分解する
- 分解したキーワードを文章の型にあてはめて文章を作成する
実際にやってみます。
1.マスターしたい「文章の型」にあった設問を選ぶ
パターンC「行動→影響→結果」をトレーニングするために、「H24事例2第2問 どのようなメリットがあったか?」を選択します。
2.選んだ設問の模範解答をキーワードレベルに分解する
模範解答は、ふぞろいデータブックの一番上の解答を使います。
酒販店Zのメリットは、競合に対抗する手段としてロック向けを訴求したプライベートブランド製品を開発し、県内の消費者からの支持を獲得したことで、この製品目当ての来店が増え、売上向上したと考えられる。
ふぞろい合格答案10年データブック
次のようにキーワードを分解します。
行動 | 影響 | 結果 |
プライベートブランド製品の開発 | 競合に対抗 県内の消費者からの支持 |
来店が増えた |
3.分解したキーワードを文章の型にあてはめて文章を作成する
パターンC「行動→影響→結果」にあてはめて解答文章を作成します。
このトレーニング方法のポイントは、模範解答からキーワードを拾うことです。
「文章の型」を身につけるのに、その都度、与件文からキーワードを拾っていては時間がかかりすぎるからです。
また、過去問を解いて拾ったキーワードをメモしておけば、そのメモをもとに文章を組み立てるトレーニングができます。
このトレーニングを繰り返し、キーワードさえ拾えていれば機械的に文章が書ける状態を目指しましょう。
まとめ
- 冗長な表現をなくし、キーワードをできる限り盛り込む
- 論理的な文章で採点者に解答の意図を伝える
- 試験時間内に記述する
- パターンA:(切り口)は、〇〇、〇〇である。
- パターンB:(根拠)のため、(結論)と考えられる。
- パターンC:(行動)による(影響)により、(目的、結果)を図る。
- 「ということ、ていく」外注ということを考えていく → 外注を考える
- 「すること」 宣伝することによって、集客する → 宣伝によって、集客する
- 「するようにします」 共有するようにします → 共有します
- 「においては」 飲食業界においては → 飲食業界では
- 「ことで」精度を上げることで → 精度を上げ
- 「を行って」標準化を行って → 標準化し
- 「〇〇化を図り」〇〇の短縮化を図り → 〇〇を短縮し
- 「関する」製品に関するデータ → 製品データ
- 精度の高い生産計画が策定できていないこと → 生産計画の精度が低いこと
- 列挙:体言止め、こと、点
- 理由:から、ため
- 効果:図る、高める、抑える、解消する、低減する
- 効果(行動より):構築する、対応する、促進する、実現する、訴求する、見直す
- 単なる言い換えになっていないか
- 「原因」と「結果」の間にワンクッション挟む必要がないか
- そもそも因果関係があるのか
- 1キーワードの文字数の目安は15文字
- 文章作成に必要な時間を把握しておき、気持ちに余裕を持つ
- 模範解答のキーワードを分解し、再び文章に直すトレーニングは短い時間でも取り組める
関連記事
各ステップを掘り下げる
設問の意図をとらえるための「設問解釈」を解説します。設問の意図とは、「何を答えさせようとしているか?」「なぜ、その質問をしているのか?」です。設問に応えるためには「設問の意図」を適切にとらえることがポイントです。
与件から解答に必要なキーワードを拾うコツや、出題者の意図を汲み取る方法、効率的に読む方法を解説します。解答に必要な情報は与件にあります。与件から効率よくキーワードを抜き出すことが大切です。
解答プロセスの全体像
解答プロセスの具体的な手順と、解答プロセス見直しのポイントをお伝えします。2次試験対策は「解答プロセス」を育てることです。各ステップの課題をひとつひとつクリアすることが、合格へのカギです。