この記事では、中小企業診断士試験の2次試験向けに、「事例1:組織、人事」の傾向と対策を解説します。
解答の切り口や知識整理にご活用ください。

事例1組織の出題傾向

事例1の特徴は、設問の意図がつかみにくく80分での対処は困難なことです。
各予備校が出している模範解答では、もっともばらつきが大きい科目です。

大崩れしないために、できるだけ多くの切り口で解答を整理することを意識してください。
特に「組織」と「人材」の切り口を意識してください。

ストーリーは、従業員数100人程度の企業の方向転換に対して、どう対処すれば良いか?がテンプレ展開になっています。

出題パターン
  • 過去の成功要因を整理する
  • 方向転換に対する現状の問題点と課題を分析する
  • 課題解決策を助言する

    事例1組織の対策

    設問の意図がつかめない

    切り口を増やしてリスク分散を意識すること以外にも、以下の2点を意識してください。

    • 組織・人事の観点から解答を作成する
    • A社の過去の強み(成功要因)を使う

    組織・人事の観点から解答を作成する

    「売上を上げるにはどうすれば良いか?」のような設問で、ついついマーケティング事例のような解答を書きたくなりますが、組織・人事の観点から解答を書いてください。

    A社の過去の強み(成功要因)を使う

    方向転換後に、過去の「強み」をどうのように使うかを考えてください。

    例えば、
    過去:凄腕営業が仕事の大半を受注してきた
    方向転換:事業拡大に伴う増員
    課題:組織的な営業体制の構築
    提案:凄腕営業の営業ノウハウをマニュアル化し、共有する。

    強みの「営業ノウハウ」を、方向転換後の組織的な営業体制のためにどう使うか?
    「マニュアル化し、組織で共有」という流れです。

    設問のレベルを意識する

    設問のレベル感として、以下の3レベルを意識してください。

    • 経営戦略レベル
    • 管理レベル
    • 現場レベル

    「方向転換」や「今後の経営方針」で経営戦略レベルの観点が問われることがあり、管理レベル、現場レベルで解答すると、とりこぼしが発生するので注意が必要です。

    設問のレベル感を意識してください。

    事例1組織の知識整理

    2次試験に必要な論点を整理しています。
    解答の切り口や知識整理にご活用ください。

    この科目は、以下の2点でとらえると整理しやいです。

    • 組織:課題を解決するための仕組み
    • 人材:仕組みを活かすための人材

    組織:課題を解決するための仕組み

    組織文化

    組織文化とは、経営戦略、組織構造などをもとに組織内で共有された、組織固有の価値観や行動規範です。

    • メリット:組織メンバー間のコミュニケーションが円滑になる。
    • デメリット:経営戦略の転換に組織文化が対応できなくなれば、戦略実行の足かせになる。

    組織構造

    • 機能別組織:同じ機能(専門性)を担当するスタッフが集まるの組織
      • メリット:スキルの伝達や共有化がしやすく、専門性を高めやすい。効率性を高めやすい。
      • デメリット:部門間の調整機能がトップに集中する。顧客目線になりにくい。
    • 事業別組織:独立して事業を実施する組織
      • メリット:機動性、柔軟性が高い。
      • デメリット:経営資源の重複によりコストがかかる。

    権限移譲

    上位への委譲
    • 管理する範囲を広げ、円滑な部門間調整(連携強化、資源配分)による全体最適化が図れる
    • 現場から離れ、人材育成、意識改革、制度改革など中長期的な課題への取り組みに集中できる
    下位への移譲
    • 迅速な意思決定により、顧客対応が強化され、顧客満足度の向上が図れる
    • 仕事の充実、拡大、参画意識が向上により、モチベーションアップが図れる

    構造変革への抵抗対応

    • 抵抗への対応策:問題の周知、説得機会の提供
    • 混乱への対応策:迅速な問題解決、情報提供
    • 対立への対応策:外部圧力の利用

    所有と経営

    同族企業
    • メリット:迅速な意思決定、スムーズな事業継承
    • デメリット:会社の私物化、組織の硬直化、不適正な経営者
    非同族企業
    • メリット:適正のある経営者、独走の抑制、参画意識が高まること
    • デメリット:利害調整が困難、短期業績の追求(長期的な視点を持ちにくい)

    M&A

    メリット:

    • 強みの取り込みにより、強みの相乗効果や弱みの補強が実現できる
    • 開発リスクの低減
    • 競争回避

    デメリット:

    • 組織文化、労働環境の変化による士気低下
    • 経営資源の重複によるコストの増加

    対策:新たな組織文化への不安解消、資源配分の見直し

    人材:仕組みを活かすための人材

    能力開発

    OJT(職場内訓練)
    • メリット:実践的な知識や技術が得られる
    • デメリット:体系的、計画的な学習が困難
    off-OJT(職場外訓練)
    • メリット:体系的な新しい知識が得られる
    • デメリット:実際の業務と乖離しやすく、業務に活かされない恐れがある
    自己啓発

    デメリット:自己実現の要求を引き出す必要があり、企業側がコントロールしにくい

    CDP:長期的な育成計画による能力開発

    企業と従業員の目指すべき人物像を一致させる必要がある

    モチベーション

    動機付け(達成感)の施策
    • 権限移譲による参画意識の向上
    • 社内提案制度の導入
    • 仕事の充実、拡大
    • 公平な評価
    衛星要因(不満の原因)の施策
    • 報酬を多くする
    • 労働環境の改善
    • 命令系統を明確にする

    配置と採用

    配置
    • 従業員の目標にあった配置により、貢献意欲を高める
    • 従業員の適正にあった配置により、能力を発揮させ、達成感や業績向上を図る
    採用

    新規採用

    • メリット:組織文化に合った人材を育成できること
    • デメリット:戦力化に時間と予算がかかること

    中途採用

    • メリット:即戦力を得られること
    • デメリット:組織文化に馴染まない恐れがあること

    成果主義

    • メリット:人件費の変動費化、モチベーションの向上
    • デメリット:短期的な成果追求により、中長期的な課題への取組が遅れる。協力体制が乱れる。

    対策:

    • 明確な評価基準(全体最適化、中長期的な課題への取組も評価する)
    • 段階的な制度導入

    非正規社員の活用

    • メリット:雇用調整の容易さ、人件費の削減
    • デメリット:ノウハウの蓄積が困難、責任感が低いこと

    対策:

    • 業務マニュアルの作成による、ノウハウの蓄積
    • 正社員への登用制度
    • 職場リーダー制の導入

    まとめ

    • 設問の意図がつかみにくく80分での対処は困難
    • 大崩れを防ぐために、多くの切り口で解答を書きリスク分散する
    • 「組織」と「人材」の視点は、常に意識する
    出題パターン
    • 過去の成功要因を整理する
    • 方向転換に対する現状の問題点と課題を分析する
    • 課題解決策を助言する
        対策
        • 設問の意図がつかめない場合は、切り口を増やしてリスク分散する
        • 組織・人材の観点から解答を作成する
        • A社の過去の強み(成功要因)を使う
        • 設問のレベル感を意識する

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